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2013年11月18日(月)|22:25|1枚のグラフから

預貯金目減りの長期化は必至

今年6月から預貯金が目減りし始めている。これまで私は「平時においては預貯金で最低限のインフレヘッジは可能」と主張してきた。何よりも過去のデータがそれを証明しているからだ。さらに「非常時」においても預貯金が目減りする期間はせいぜい1年程度にすぎなかった。しかし、現在進行中の目減りは相当長く続く。それは過去の預貯金目減り時代と現下の金利、物価、政策を巡る環境は全く異なるためだ。我々は預金のインフレヘッジ機能につき、いよいよ本格的に憂慮し始めなければならない時代に入ってきた(グラフはクリックで拡大)。
預貯金の目減り長期化は必至
図にみる通り、物価(消費者物価指数))と金利(預金、国債利回り)はよく似た動きを示す。理由は明白だ。物価が上がり始めれば人々は消費を急ぎ、そのため資金への需要が高まり、金利が上がる。逆に物価が下がっているときには人々は消費を先に延ばす。モノを買わない。おかねへの需要は乏しい。だから金利は下がる。金利を下げてでも銀行は貸し出したがる。

第一次オイルショックによる物価への影響がほぼ消滅した1977年以降今日に至るまでの35年間、ほとんどの時期で預金あるいは国債の運用でえられる金利で、物価の上昇をカバーできていた。

例外は3回。1980年の第二次オイルショック時。さすがに9%近いインフレになると預金ではカバーできない。2回目は1997年の消費税引き上げ時。このときは預金、国債利回りともほとんど動かなかった。そのためインフレに負けた。ただし1年間だけ。

3回目は新興国の工業化の進展がピークを迎えた2007年半ば。原油、鉱物、穀物の価格が揃って急騰した。この時も預貯金などはインフレに負けた。しかしこの時も1年間だけ。

さて、今年6月から再びインフレ率が預貯金の金利を一気に抜いた。1年定期預金0.02%に対してインフレ率はすでに0.7%(9月)。大規模金融緩和、円安、それに伴う株高がその直接の原因だ。今年4月4日に安倍政権の意を受けた黒田日銀総裁が「2年後をめどに2%のインフレ率を目標とする」と言明したが、すでにその3分の1は達成済み。ただし、今進行中のインフレは、日本政府・日銀の積極的な意思に基づくと言う点で、過去のインフレとはその性格を異にする。

アベノミクスの金融政策の核は「インフレ率>貸出金利」とすることにより、企業の設備投資、個人消費を掘り起こすことだ。1%で借りたお金を設備投資に回し、生産品価格が3%上がっているのなら企業収益は増える。つまりデフレ経済からの脱却を図るための契機にはなる。

しかし一方「貸出金利>預貯金金利」なので、「インフレ率>預貯金金利」だ。つまり預金の目減りを意味する。実質金利をマイナスにして企業の設備投資を刺激するということは、家計の預貯金を目減りさせることと同義だ。

実質金利をマイナスにする狙いはデフレからの脱却。それが表向きの理由だ。しかし、その内に「金融抑制」と呼ぶべき意思が働いているのではないか、との見方が浸透してきた。つまり「インフレ率>貸出金利・預貯金金利」と同時に「インフレ率>国債利回り」とすることにより、すでに1000兆円を超えるに至った政府の累積債務を実質的に減らす、という意図が働いているのではないか、というのだ。

いうまでもなく巨額の債務を軽減するためのもっとも簡単な方法の1つがインフレだ。しかし、際立ったインフレを起こすわけにはいかない。が「インフレ率>国債利回り」という状態をうまくコントロールできれば、緩やかであるが実質的に政府の債務を減らすことが可能だ。

財政再建という課題は少なくとも5年〜10年で片付く問題ではない。2015年にプライマリーバランスの赤字を半減、2020年に黒字化が骨太の方針として決まった。とすれば、金融抑制政策への意思は相当長期にわたって継続する可能性が高い。つまり、預貯金は目減りし、国債(並びに債券)ではほとんどインフレはヘッジできないという時期は1年や2年で終わりそうにはない。相当程度期化する公算が高い。過去50年、我々はそうした事態を経験したことはない。

過日、ある講演会で竹中平蔵氏が「機動的な財政出動というアベノミクスの第二の矢は誤解されている。積極的な財政出動ではなく、中期的には財政再建を意味している」と述べた。彼の立場上これは政府の統一的な意思だとみていいだろう。うまり、以上のような「金融抑圧」への誘惑はこれからあらゆる金融、財政政策について回ると考えるのが妥当だ。

「預貯金は最低限のインフレヘッジ機能を持つ」。この私の主張はしばらくは棚上げである。さて、ではどうすればいいのか?あるいは、預貯金、国債の利回りがインフレ率を恒常的に下回る(ように操作する)ことは何を意味するのか。これは他日改めて記すことにしよう。
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角川総一
金融教育、金融評論家。
(株)金融データシステム代表取締役。1949年大阪生まれ。
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