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2018年02月26日(月)|23:24|1枚のグラフから

私たちは生活実感から遊離した物価上昇率を見せられ続けてきたのかもしれない

総務省統計局は23日、1月の消費者物価指数の前年比伸び率は+0.9%と明らかにした。むろん新聞、テレビ、ネットニュースは「0.9%上昇」と報じた。特に断りがなければ消費者物価は「生鮮食品を除く」指数で示すことになっている。


しかし報じられることはほとんどないがより生活実感に近い「帰属家賃を除く」指数で見ると、1.7%上昇しているのだ。グラフに見るとおりだ。それどころか、過去数年で見ても、「生鮮食品を除く」データより常に高いのである。

もちろん、過去数カ月の乖離は主に生鮮食品の値上がりによるものだ。しかし、それ以前でも常に「生鮮食品除く」指数の方が低い。これは物価上昇期には帰属家賃がそれについていかないためだ。帰属家賃は下方にも上方にも硬直的なのです。


新聞報道などでお目にかかる物価上昇率は、生活実感に近い「帰属家賃を除く」指数より常に低かったのです。一体どういうこと?

私達は特に気を止めることなく、名目、実質という言葉に疑いを持たない。「実質賃金が上がらないことには」とか「実質でみた家計消費は盛り上がりに欠ける」といった言葉を疑わない。むろん、実質値とは、名目値からインフレ率を控除したものであることも了解済みだ。


しかし、ここで用いられているインフレ率は、私達が一般に新聞、テレビ、雑誌などで報じられる消費者物価指数(生鮮食品除く)とはまったく別の物価指数に基づき算出されていることをご存じだろうか?


消費者物価指数と一口に言っても、実は総務省統計局が毎月発表する指数は5つも6つもある。


うち一般に報じられる消費者物価指数は「生鮮食品除く」指数。いわば政府・日銀、そしてマスコミ公認の指数だ。「2ヶ月連続で前年比で0.9%上昇」(今年1月分のデータについての報道)という時の0.9%はまさにこれ。


しかし、実質賃金や実質家計消費などを算出する際に使われる消費者物価指数はこれとは違う。「帰属家賃を除く」指数だ。理由は簡単だ。そのほうが生活実感に近いからだ(理由は後述)。


インフレ率はグラフ1の通り、前年比で示されるのが普通だ。前年比とは変化率だ。変化率を計算するにはそのもとの数がある。それを示したのがグラフ2。物価指数そのものだ。今使われている現役の指数は2015年平均の物価を100としたうえで作成されている。

生活実感から乖離した物価データ(指数)
この図は何を言っているか?「アベノミクス開始以来、物価は4%しか上がっていないと言い張るのかい。ご冗談でしょう。7%上がっているんですぜ」っていうのがこのグラフの言い分だ。


第二次安倍政権が発足した2012年12月から今年1月までの5年1ヶ月に、一般の「生鮮食品除く」指数は4%上昇したのに対して、より生活実感に近い「帰属家賃を除く」指数は、7%上がっている。つまり、一般に報じられる以上に我々の実感としての物価は上がっているのである。


この違いは何か?まず「生鮮食品を除く」。これはわかりやすい。天候地変等により生鮮野菜などの値段は大きくブレる。これは景気のトレンドは基本的には関係ない。したがって生鮮食品の価格は外部要因として除外する。


一方、「帰属家賃除く」とは何か。これは自宅を所有している人にとり持ち家を借家とみなした場合に支払われるであろう家賃のことだ。賃貸住宅の賃貸料などから推計される。


では、なぜ「帰属家賃除く」指数が作成されているのか。これは簡単。自宅を持つ人の物価感から言えば、これを外したほうが肌身感覚に近いからだ。自分の居住区のアパートの家賃が平均的に昨年に比べて5%上がったからといって、自分が住む自宅に対して5%分余分に家賃を支払った=物価が上がった、とみなすのは現実的ではない。


先ごろ年金額の改定が決定された。インフレスライド方式を用いて年金額は改定される。この場合、インフレ率として使われるのは一般に報じられる「生鮮食品を除く」指数ではなく「帰属家賃を除く」指数だ。


先に述べたように「実質賃金」や「実質消費」を計算するにさいに「帰属家賃を除く」指数が使われるも同じ理由からだ。これだけ実効性のある指数であるにもかかわらず、経済ニュースでは、この指数が報じられることはほぼ皆無だ。


特に最近にいたりこの2つの指数の差は拡大気味。その理由は単純だ。借家の家賃はさほど上がっていない。このため、「帰属家賃を除く」指数は高く算出され、これを含めた「生鮮食品を除く」指数は低めに算出されるのである。


生活実感からする以上、「生鮮食品除く」指数は不当に低く算出されているとも言える。


さて、日銀の金融政策は言うまでもなく「生鮮食品除く」指数をベンチマークとしている。「2%インフレ目標」も「生鮮食品除く」指数だ。つまり「生鮮食品を除く」指数をベンチマークとして運営される金融政策は、大衆の生活感覚からずれている可能性があるということだ。そしてそのズレは昨今大きい。看過できないくらい大きくなってきている。この問題については既にロイターが報じている


そもそも物価統計とは何のためにあるのか?景気の基調を判断するためか?実質的な生活の豊かさを実質値として測るためのメジャーなのか?


くどいようだが、実質賃金や実質家計を算出し、消費年金額の改定に用いられる物価指数と、一般に報じられ、流布される物価指数の動きが乖離し始めてきたことには注意を払う必要があると思う。

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角川総一
金融教育、金融評論家。
(株)金融データシステム代表取締役。1949年大阪生まれ。
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