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2017年12月28日(木)|23:09|考えるグラフ

家計は20年前からすでに利子支払超過に転じていた!

「利下げは企業の借り入れコストを引き下げるため、景気回復効果を持つ」。前回は、このようなメカニズムが働く前提は既に壊れているのではないか、との仮説から始めた。

今回はより直接的に、家計、企業の利子の受払いがどのように推移してきたかを示すグラフから始めよう。

家計の利子受払


 

非金融法人企業の利子受払

図は1980年以降の、家計と非金融法人企業の利子の受払いの推移を示す。出所は内閣府の国民経済計算の制度部門別所得支出勘定。


まずは家計部門。1995年まで利子の受取が支払いを上回っていた家計はその後一転、利子の支払超過に転じた。今から20年前のことだ。


そりゃそうだろう。直近では930兆円の預貯金に対し金融機関借入が250兆円ある(日銀の資金循環勘定)。930兆円の預貯金の利率は平均的して0.1%以下だろう。一方、住宅ローンは変動金利型でも2.475%(基準金利)、カードローンやクレジットカードローンなどは平気で15%とか18%の金利がついてる。これじゃ、どう考えても家計は利子の支払超になるのは当然だ。


1980年代〜1990年代前半には純利子収支は年平均6.5兆円の受取超過だったのが、2000年代以降は逆に6兆円の支払超過だ。


非金融法人企業はどうか。これも1990年代なかば以降は様変わり。1990年代前半までの15年間は年平均で20兆円を超える支払超過だったのが、直近15年でではわずか5兆円程度に、2016年度に至っては1.1兆円の支払い超過額にまで縮小してきた。


なんと、利子の受払全体(ネット=正味=差額)で見ると、いまや法人企業の利子支払額よりも家計の利子支払額のほうが大きいのである。


教科書にはこんなこと書いてないぞ!


こんな単年度ごとの過不足額での観察じゃなく、ちょっと違った視点で見てみましょうか?


まずは、この20年の間(1980年〜1995年と2000年〜2016年)に利子の受払いがどれだけ変化したか?家計は12.6兆円のポジション悪化に対し、法人企業は逆に15兆円分ポジションが改善している。つまりこの間の金利低下を主な要因として家計から企業部門へ10数兆円規模の富の移転が起こったのである。


屋上屋を架していうと、2000年度からの15年間あまりで家計の純利子支払いの累積額は111.2兆円。これでは家計の体力は落ちます。家計は企業と異なり、利子を払ってお金を借り、その金利以上の収益を上げて利益を獲得するセクターではない。企業はたとえどれだけ高い金利で借りても、それを上回る収益を稼ぎ出せば利益が出る。家計はそうは問屋がおろさない。


これだけ家計が痛めつけられれば、そりゃ、家計消費のベースが損なわれるのは当然でしょう。


このまま行けば今2017年度は、法人企業部門は受取超過部門に転じるかもしれない。何のことはない。私達が長年習ってきた「家計は利子をもらって預貯金する側」「企業はそのお金を金融機関経由で借りて利子を支払う側」という図式がまるきり逆転してきたのだ。


これだけ長きに渡って金融を緩和、金利を下げて企業の負担を軽く、景気回復を図ろうとしたのだが、一方で利子受入部門から利子の純支払部門の側に移った家計はむしろ景気の足を引っ張り始めたのはごく自然な成り行きだった。


家計消費が沈滞を続ける理由につき、世の中では一般に「賃上げが鈍い=実質賃金が上がらない」というがそれは今に始まったことではない。また「消費増税」というが、そんな一時的な事件!が主因ではない。


むしろ、それ以上に家計部門が「利子の受払い」勘定において、過去15年以上にわたって毎年平均して6兆円以上にものぼる利子の純支払いに追われ続けていることが持つ意味は大きい。しかしこれを指摘する声は寡聞にして聞かない。


支出面でのGDPの58%を占める家計消費は「実質可処分所得=名目所得−(税+社会保険料)―インフレ率」×「財産所得(利子所得、配当等)」×「1−将来への経済的不安」で概ね決まる。


名目所得が増えないまま、これから数年はなし崩し的に所得税は上がり、社会保険料が上がり続けることを国民の100%が確信している。インフレ率を2%に近づけようとする努力がさらに続き、利子所得は毎年5兆円規模で持ち出しになる。そしてこの流れが変わる兆しはほぼない。すると、うえのしきはどうなる?このあたりはダイヤモンド・オンラインに掲載の深田晶恵氏の解説【サラリーマン大増税時代!2021年までの「手取り年収」はこうなる】が参考になる。


先ごろ、黒田日銀総裁がスイス・チューリッヒ大学での講演で「リバーサル・レート」なる概念を唐突に持ち出したことがひとしきり話題になった。「もうこれ以上の緩和はむしろ逆効果ですよ」という言わば臨界点のレートを指しているらしい。日銀内部で今の金融緩和策の効果について疑問視する声が無視できなくなってきたことを示しているのだろう。以上の事実を踏まえれば当然だと思う。


それにしても気になることがある。多くの解説は「リバーサル・レート以下になると金融機関が適正な利ざやを確保することが困難になり、自己資本比率を悪化させるなど体力を削ぎ」とか「金融仲介機能に支障が生じる」なんて、大本営発表をそのまま流しているが、以上の事実を踏まえればこれは噴飯物。


金融機関の体力が落ちるから景気が悪くなるなんて理屈はためにする議論だ。もうちょっとまともな解説をしましょう。


以下は蛇足と注。


その1。2004年〜2008年、2013年〜2015年にかけ家計の利子受入が多少増えているがこれは、この時期に円安が進んだため外貨建て債券の利子が円換算で膨れ上がったことが一因だろう。


その2。ここでは、家計が保険、年金から得る収益はカウントしていない。だが、現在のような超金利が継続していることで、保険、年金という図体の大きな資産から得られる収益がどれだけ減少してきたかは容易に想像できる。


国民経済計算中の資料によると、家計が保険・年金から得ている収益は1994年度には16.2兆円だったのが、2016年度には9.8兆円にまで減少。これも最大の要因は金利低下によるものだ。これまで含めると、上に述べた以上に超低金利の持続による家計経済の毀損度合いは大きい。


注。国民経済計算でいう「家計」には「個人事業主」も含まれ、「非金融法人企業」には公的企業も含まれている。

(この項終わり)

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角川総一
金融教育、金融評論家。
(株)金融データシステム代表取締役。1949年大阪生まれ。
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