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2017年04月25日(火)|18:11|1枚のグラフから

ドナルド・トランプ氏に見せたいこのグラフ

トランプ氏の円安脅威論はまるでドンキホーテにとっての40基の風車であり、杞の国の人々の天が崩れ落ちることへの恐怖に似る。実は、2013年以降の異次元緩和を背景にした円安にもかかわらず、わが国の対米輸出金額(ドル建て)はむしろ減少しているのだ。

米トランプ氏にぜひ見てもらいたいグラフがここにある。これを見れば、彼は「円安を牽制しなければならんな」なんてことはもう口にしないはずだ。むしろ「少なくとも対円でドル高が進んでもそれほど心配しなくてもいいな」となる可能性がある。なぜか?
 

トランプ政権による円安懸念についての世間一般の解釈は以下の通りだ。

すなわち、日本の異次元緩和に伴う円安が米国の自動車産業などを苦境に追い込んでいる。何しろ、アベノミクス前には1ドル=80円だったドル円相場は一時120円台まで駆け上った。異次元緩和を背景にしたその円安を利用して日本が米国に車をじゃんじゃん輸出しなければ、もっと米国内の雇用が増えたはず、というわけだ。

そして多くの人々は「ああ、そんな面もあるかもしれないな」と納得してしまう。と同時に「トヨタ自動車なんてこのところ毎年のように史上最高の営業利益を叩き出しているよね」という心象風景が浮かぶかもしれない。

しかし、ちょっと待て!本当にわが自動車メーカーなどは、この円安進行に伴い米国向け輸出を増やしたのだろうか?トヨタ自動車が売上げを大幅に伸ばし、市場最高レベルの営業利益を叩き出したのは事実だ。が、それはあくまで円建て基準で見た場合の話ではないのか?

トランプに見せたい3

図表1はわが国の対米輸出で最大のシェアを占める輸出用機器の輸出代金の推移だ。ただし通貨は円ベース。確かに日本の自動車の輸出、すなわち対外売上金額は急増している(月ごとの数値の凸凹をならすために3ヶ月後方移動平均データを示してある)。

これは当たり前のこと。同じ車を2万ドルで売っても、1ドル=80円の時には160万円の売り上げだが、1ドル=120円になれば240万円だ。前回述べたとおり、米国の輸出入のドル建て比率は9割。実際、わが国の対米輸出についてもほぼ9割がドル建てだ。

では、この円ベースでの輸出代金が急増したことが直ちに「日本車の対米輸出攻勢」を意味するのか?そうではないだろう。米国にとり重要なのは、この間のドル高・円安進行に伴い日本の自動車メーカーへのドル支払代金がどう変化したか、ではないのか?

図表1の円ベースでの輸出代金をドルベースに換算したものが図表2だ。意外にも、2012年以降の円安局面ではドル建てでの輸出代金はむしろ減少気味なのである。2012年=525億ドル、13年=520億ドル、14年=489億ドル、15年=490億ドル。これをどう解釈すればいいのだろう?

トランプに見せたい4

「輸出代金(ドルベース)=1台あたりのドルベースでの輸出価格*輸出台数」なのだから、考えられる理由の1つは輸出価格の引き下げだ。ドルベースの価格引下げ率が円安ピッチ以内に収まっていれば、円の輸出代金は増える。

米国の側から言えば「ドルベースでの価格をちょっと下げてよ」「これだけ円安が進んでいるのだから、損はしないでしょ」というわけだ。

2つ目には、輸出価格は下がったものの、輸出台数はほとんど増えなかった。おそらくこの両方なのだろう。

以上の事実は、アベノミクス初期において円安が進行したにもかかわらず、それがほとんど輸出数量の増大につながらなかったため、国内生産も増えず、したがって国内での設備投資が盛り上がらなかったことと軌を一にする。

以上の通り、円安で輸出数量の増加⇒ドルベースでの輸出代金増加というメカニズムがもう働かなくなってきたのである。かつてはそうではなかった。

すなわち2008年以前の円安局面では例外なく、ドルベースでも輸出代金は増えていた。すなわち、輸出価格の引下げにより、その引下げ率以上に輸出数量が増えていたのだ。

図中´↓はいずれもそうしたメカニズムが働いていたことを示す。ところが2012年以降、様相は一変した。リーマンショックを境に、わが国の貿易構造は想像を超えるレベルで変化していたのである。

なおここでは煩雑さを避けるために、最大の対米輸出品目である輸送用機器のみを取り上げたが、これに次ぐ一般機械、電機機器については、円安が始まった2012年以降2015年に至るまで減少の一途だ。

2012年(機械334億ドル、電機214億ドル)⇒2013年(299億ドル、193億ドル)⇒2014年(302億ドル、187億ドル)⇒2015年(279億ドル、179億ドル)。

「他者の身になって考えろ」という。これは経済でも同じこと。特に通商問題ではそうだ。その場合最も重要なことは円建てだけではなく少なくともドル建てでも考えること。

(本稿は「近代セールス」(近代セールス社)2017年4月1日号の原稿を加筆・修正したものである)

 

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角川総一
金融教育、金融評論家。
(株)金融データシステム代表取締役。1949年大阪生まれ。
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