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2016年06月02日(木)|22:44|1枚のグラフから

短期プライムレートは死んだか?

変動金利住宅ローン金利下がらず家計は3000億円の機会損失

日銀が当座預金の一部へのマイナス金利適用を発表してから早4カ月。

この間、コール、TIBOR、短期国債(TDB)など短期金利は日銀の目論見通り順調に低下。長期〜超長期金利は日銀が当初想定していたと想像される以上に急落した。かくして残存年限13年以下の国債の利回りは完全にゼロ以下の水準に没した。

にもかかわらず、変動金利型住宅ローン金利のベースとなるべき短期プライムレートはこうした動きに知らぬが半兵衛を決め込んでいる。何が問題なのか?
長期運用を旨とする生命保険会社、制度上融資ができず、短期〜中期金利が軒並みマイナス圏内にさがる中で極度の運用難に陥ったゆうちょ銀行等 が長期国債で運用せざるを得なくなったことが理由だ。この長期金利の低下ピッチは日銀の口吻からすると、予想以上のものであったようだ。

だとすればこのことは、保険会社やゆうちょ銀行ほかの機関が国債以外のリスク性資産への運用先シフトを日銀が予想した以上にためらっていることを示している。ともあれ、期間を問わずあらゆる金利は順調に低下しているのである。

マイナス金利決定後すでに0.75%下がったコールレート

ごく最近の動きを再度確認してみる。マイナス金利前の無担保コールレートはおおむね0.7%台で推移していたのが、6月初頭では−0.05%前後だ。0.75%も下がった。同期間に、TIBOR(3か月)は0.17%から0.06%へ低下した。

さてこの中にあってほとんど唯一、一動だにしない金利がある。短期プライムレート、いわゆる短プラがそれだ。短プラとは教科書的に言うと、銀行などが企業向けに期間1年未満の短期貸出を行うに際しての最優遇金利だ。つまり基準金利。これを基準に貸出先企業の信用力に応じて一定のスプレッドを上乗せした上で金利設定する(ことになっている)。

この短期プライムレートはコール、CD等の市中短期金利の動向を総合的に勘案しつつ、各金融機関が自主的に決める。これが建前だ。しかし現実にはほぼ横一線で決まる。現在は1.475%だ。ということは、事実上メガバンクが主導して決め、それ以外の銀行等はそれに追随するのだと見ていい。

図でみるとおり、今般のマイナス金利導入劇以降にとどまらず、相当長期にわたって短期プライムレートは硬直化している。短期の市中金利の水準を総合的に勘案して決まるという文脈に即して解釈すれば、勘案されているようにはとても見えないのだ。この図はそのことを如実に示す。

(クリックすれば拡大します)

不運?に泣く変動金利型住宅ローンの利用者

さて、この短期プライムレートが上方で硬直していることは具体的にどんな意味を持つか。まずは、この短期プライムレートにほぼ機械的に連動する(ことになっている)変動金利型住宅ローン金利が、一向に下がらないのである。短プラの硬直性がそのまま変動金利型住宅ローン金利を硬直させているのだ。かくして「マイナス金利時代に至っても変動金利型住宅ローン金利の引き下げはなく、ローンの負担は一向に減らない。

変動金利型住宅ローンの残高は全民間住宅ローン残高(160兆円)の60%近くを占める(国土交通省の「民間住宅ローンに関する実態調査H27年版」)。むろん家計部門にとっては最大の負債項目だ。これがマイナス金利という局面に入ったにもかかわらず、今に至るも一切下がらないのだ。上記のごとく、あらゆる短期金利が顕著に低下しているにもかかわらずだ。おかしくないか。そのおかしさは、同じく銀行による企業向け貸出金利(短期)の変動と対比させてみればより明瞭になる。

銀行等の企業向け貸出金利を端的に示すのが、貸出約定平均金利(新規/短期)だ。文字通り、銀行等が期間1年以下の短期資金を企業などに貸し出すに際して締結(約定)された金利そのものだ。
この貸出金利は当然のことであるが、短期市中金利の低下に平仄を合わせ、ちゃんと下がってきた。 そう。短期プライムレートが1.475%の水準で硬直し続けている間に、企業向け貸出約定金利は順調に下がってきているのだ。

2009年平均では1.233%だったのが、つい先ごろ発表された今年3月には0.66%まで低下。企業向け貸し出しの中心は期間1年以下の短期貸しだ。これが0.6%も下がっている間に、家計にとって最大の負債項目である変動金利型住宅ローンの金利は一向に下がろうとしないのだ。

何という預貯金レート下げの手際の良さよ

ちなみに、ほとんどスズメの涙でさえない預貯金金利はマイナス金利突入後、速やかに2段、3段の利下げが行われた。数週間を経ずしてストン、ストンと落ちたのだ。何という手際の良さよ。東京三菱UFJ銀行についてみれば、マイナス金利発表直前は普通預金が0.02%だったのが現在は0.001%、1年定期は同じく0.025%から0.01%へ低下している。「お代官様は、なんと情け容赦のない仕打ちをなさる!」。

マイナス金利化によるメリット、デメリットにつき幾つかのシンクタンク、エコノミストは試算したという。報じられた限りでは、家計部門は住宅ローン金利低下で恩恵をそれなりにえるはずだと言及したという。確かに、フラット35等の金利を見る限り、長期固定金利型住宅ローン金利は、マイナス金利導入によりこれまでにおおむね0.3%程度下がった。

しかし問題とすべき論点はずれていやしないか。

長期固定金利ローン金利低下で既存の借入者が恩恵を受けるには、借換えの手続きが必要だ。数十万円程度の手数料がかかろう。それに対して市中金利の低下を反映させ、短期プライムレート引き下げ⇒変動金利型ローン金利引き下げが行われれば、既存のすべての変動金利型ローン利用者を利するのだ。

市中金利低下に応じて短期プライムレートをせめて0.3%でも下げれば(本当は0.5%は下げるべきだと思うが)、家計が享受する効果は固定金利型住宅ローン金利低下から受ける恩恵の比ではないであろう。そのメリットは比較にならない。

個人消費不振の主因は家計が草刈り場になる不安にあり

安倍政権スタート直前の2012年と2015年のGDPをチェックしてみた。この間、GDPは実額で519兆円から529兆円へ10兆円拡大した(年率では0.6%のプラス)。この中で純輸出、政府最終消費支出、民間企業設備はこぞって2兆円以上増加。しかし、家計消費のみが1兆5000億円減少している。家計がへたっているのである。

家計消費の低迷の原因として取り上げられるのが、2014年4月の消費増税だ。あるいは実質賃金の伸び悩みだ。しかし本質的にはそんな一過性のことではない。物事を分かりやすいからとか、政治的な道具に使えるとかいう本音に基づき、問題を矮小化してはダメだ。

より本質的には、「企業減税の一方では社会保険料引上げは既定事実だし、円安⇒インフレ策は明らかに一部製造企業と家計の格差を拡大するにきまっている。預貯金はすぐに下げるにもかかわらず、肝心の変動金利型住宅ローンは下がらないし」といった半ば無意識の意識が個人消費を抑制しているのではないのか?そんな心象がたまりたまって将来への不安が高まる一方であることが根底にあると思う。予想以上の低成長を余儀なくさせられている中で、家計が知らず知らずのうちに草刈り場になりつつある予感が根付き始めているのではないのか。

安倍首相は企業へ賃上げ圧力をかけるだけではなく、メガバンクの首脳を集めて「せめて短期金利の市場実勢に合わせ、変動金利型住宅ローン金利の引き下げるべきじゃないか」くらいのことは言っても良いと思うのだがどうか?いやそこまでは、と言うなら日銀に言わせればいい。

日常的に日銀はメガバンクの幹部諸氏と意見交換を行っている。その中で短プラの扱いが話題に上っていないはずはあるまい。いつやるのか?マイナス金利下で各種金利が下がりきった今しかないじゃないか?参院選挙にもプラスなんだから。


 
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角川総一
金融教育、金融評論家。
(株)金融データシステム代表取締役。1949年大阪生まれ。
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