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2014年07月09日(水)|16:50|経済データ探検隊(初級編)

経済データ探検隊 2話 なぜ夏場以降の物価上昇率は鈍化するって分かるのか!      

なぜ「夏場以降は物価上昇率の鈍化が見込まれる」とわかる?

「夏場にかけ物価上昇率の鈍化が見込まれる」。最近、こんな表現によくお目にかかります。実際、黒田日銀総裁も記者会見や公演の中で、しばらくは(今までほどには)物価上昇率は上昇しない、と発言しています。

もちろんここで言う物価上昇率とは、消費者物価上昇率(生鮮食品除く)の前年同月比のこと。最近の実績は3月=+1.3%、4月=1.5%、5月=1.4%(4月以降は消費増税分除く)さて、その理由は?報じられるのはせいぜい「円安の進展が止まったから」程度です。

今回は、消費者物価の動きを予測するための最も基本的なデータの見方を、三点セットのグラフを使ってご紹介します。
消費者物価指数(の対前年比伸び=インフレ率)は大雑把にいうと、以下の3つの要素によって決まります。

消費者物価指数の対前年比≒
       国内需給+為替相場+海外商品市況+前年の指数の水準

まず国内での需給(需要と供給のバランス)から。消費者物価の動きとの連動性が強いことで知られるのが、日銀短観中の「需給ID」です。これは全国の法人からアンケートによって「需要過多」か「供給過多」かの回答を得たうえで算出される指数です。回答者全体の40%が需要過多、残り60%が供給過多と答えた場合には指数は「マイナス20」となります。

図表1では7月1日に発表されたばかりの最新の需給ID(3か月先の予想値)データを使っていますが、これまでの上昇ピッチにいささか陰りが見えてきたように読めます。4−5月にかけて実質的な家計消費は相当落ち込んでいます。この動きを一部反映したのでしょう。
日銀の需給DIと消費者物価
(クリックすれば拡大します)
次に、以上のような需給に変化がない場合でも、国内の消費者物価はいとも簡単に動きます。それは為替相場と海外の主に原油を中心とする素材・原料の値動きによってです。

我が国は輸入額の55%が工業用原料であり、うち34%は原油、天然ガスなどの鉱物性燃料です。これらの原材料の平均的な価格を端的に示すのが「ロイター ジェフリーズ CRB指数」です。ということは、円ベースでみた輸入原材料の価格動向が我が国の消費者物価に対して重大な影響を与えるのは当然でしょう。

図表2では「ドル円相場*CRB指数/100」という指数を作成してみました。もちろんこの数値の上昇は、我が国の円ベースでの原材料の輸入価格の上昇を意味します。この指数は消費者物価に先行しつつ、よく似た動きを示していることがわかります。そして、今年5月から指数の伸びは鈍ってきています。
CRB*ドル円相場と消費者物価指数
(クリックすれば拡大します)
最後の3つ目の道具は「前年比」というデータの特性に関するテーマです。私たちは多くの経済データを前年比での伸びで測ることを当然だと思いがちです。が、この前年比のデータを扱う時には注意が必要です。それは、前年比の伸びは前年のデータの水準に依存するからです。発射台が高ければ、伸び率は低くなるのは当然です。

図表3で2010年以降、各年における消費者物価上昇率(前年比)の伸びを月別に並べておきました。ここで興味深いことに気付きます。隣り合う2つの年の折れ線の形状がおおむね逆なのです。前年の4月の伸びが高ければ、翌年の4月の伸び率が低い、というようにです。2010年⇒2011年⇒2012年⇒2013年と順に辿っていけばわかります。
前年比データは循環する
もっとも隣り合う年の年間の前月比データの中間線は、やや右上がりであったり、ほとんど横ばいであったりします。これはもともとのデータのトレンドライン(基本的な動きの方向性)を示します。

さて、2013年は5月以降その伸び率が高くなっています。さらには10月以降年末にかけても伸び率は高まっています。つまり昨年のこの時期には物価指数自体の水準がどんどん上がっていったのです。発射台がぐんぐん高くなっていったのですから、今年も同じ時期には、前年比でみた消費者物価の伸びは一時的に鈍ると読めるのです。

さて、それにしても日銀の物価目標が「生鮮食品除く消費者物価指数」である以上、原油な天然ガス価格がイラク、シリアに留まらず、イスラエルを含む中東情勢の緊迫化によっていとも簡単に上がってしますのです。その場合、「原油価格が上がったから2%のインフレ目標は達成できた」といって日銀は、これまでの政策効果を自賛するのでしょうか?

 
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角川総一
金融教育、金融評論家。
(株)金融データシステム代表取締役。1949年大阪生まれ。
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